動かない病棟を動かすには仕組みを作りましょう。
では、どんな仕組みを作るか?
仕組み作りに重要なことは、
1.柔軟であること
柔軟であることは【変化に適応できる】ことです。
この変化には
・環境による変化
・時間による変化
・人による変化
の3つがあります。
<環境による変化>
これは病棟の特色です。
以前に私が勤めていた病院は亜急性期、回復期、生活期(慢性期)
とさまざまな病棟がありました。
病棟ごとに建物の構造やモノの配置場所、スタッフの動き方が違います。
そのため、病棟ごとの環境を把握することが重要になります。
仕組みを柔軟にするためには、仕組みを使う病棟ごとの特色に
合うように作らなくては使えません。
病棟ごとの特色の例として
・ルールの違い
・モノの置き場所の違い などがあります。
これら病棟の環境を適切に把握することで仕組みを作りやすく、
使いやすく、動きやすいものになるんです。
環境を把握することに必要なのは各病棟で会話のできる人を作ってください。
1人だけで構いません。
会話ができれば自然と病棟の情報が入ってきます。
何人も会話する必要はありません。むしろ人は増やさない。
環境を把握するまでは1人に絞ってください。この1人がポイントです。
会話のできる人を作るためにやることは2つだけ。
相手の名前を覚えて、名前を呼ぶ。それだけです。
呼ぶときは「看護師さん」ではなく「○○さん」と名前で呼ぶだけ。
名前で呼ぶとその人だけが振り向いてくれますよね。ここが大事。
あなたに用があります、という意思表示をしっかりすること。
これを繰り返すことで、声をかけてくる人という認識が周囲に出来上がります。
これだけで1ステップクリアです。
もし、この時点でハードルが高い人は
1日1回以上病棟に顔を出してください。
カルテを見に行くのに1回以上行ってる、とかではなく
病棟に入る前にかならず挨拶をして下さい。
「おはようございます」「お疲れさまです」何でも良いです。
会話ができなければまずはここから!
<時間による変化>
ここでの時間は【1日のリズム・流れ】のことです。
この流れは病棟・職種ごとに違います。
1日の流れを効率よく知るには
・病棟でリハをする
・病棟に頻回に顔を出すこと
・会話のできる人から情報をもらう
病棟でリハをすることで、病棟の方から声がかかることもあります。
「○時におむつ交換だから」「これからシーツ交換です」
「○時に経管栄養です」など
これで何となく病棟のタイムスケジュールが見えてきますね。
また病棟へ頻回に顔を出すことで、
・顔を覚えてもらえる
・忙しい時間、手の空く時間がわかる
自分にあいた時間があるならば、何度も病棟に足を運んで認知をしてもらいましょう。
最後は先ほどの会話のできている人から情報をもらいましょう。
ここが出来ていれば前の2つはいらないかもしれません。
何にしてもまず情報収集です。
情報から病棟のタイムスケジュールを知りましょう。
<人による変化>
ここでの変化は【スタッフの移動・新人の入職】のことです。
人に柔軟であること、これが大事になります。
私たちの働く場所は年齢・経験・性別などが人によってさまざまです。
経験20年目の人と新人が同じ仕事をすることが多々あります。
そのため、どんな人にも伝えやすい仕組みにすることが重要です。
これは次の見出しで詳しく説明します。
どんな人でも分かる・通じるを目指すことで柔軟な仕組みが完成します。
2.すぐ使える
仕組みは作っただけでは意味がありません。
実際に使ってもらって初めて意味を持ちます。
また、使うことで改善点、問題点が出てきます。
そこで、すぐ使うためには
- 使いやすい
- 覚えやすい
- 伝えやすい
この3つを満たせば、すぐに使える仕組みが完成します。
具体的な方法をお伝えします。
<使いやすい>
使いやすさはカンタンであること。
カンタンにするためには
・箇条書き
・ひと言で伝えられる
・イメージできる動きを使う
まず、使いやすいポイントはゴチャゴチャしていないこと。
例えば、ポジショニングについて説明を作ったとすると
「肩甲骨から肘まで、肩が内旋しないように入れてください」
「股関節が外旋しすぎないようにクッションを斜めに入れてください」
この説明ではわかるけど、行動には移せません。
「はいはい。」と流されてしまいます。
ここで大事なのは箇条書き。
ポジショニングのやり方については特に触れません。
やり方はそれぞれ合りますし、リハ職でも見解が分かれます。
そこでポジショニング後のチェック項目を箇条書きにする。
「肩が浮いてるか」「肘は伸びてるか」「膝はまっすぐか」こんな感じです。
これならチェックだけで済みますね。
書き方は縦に並べることです。上から順に見て確認できる仕組みを作るんです。
次の説明は、上の書いてある言葉でお気づきの方もいると思います。
ひとこと、で伝わることですね。文にならないように
単語を2,3個並べるくらいでちょうど良いです。
【名前】+【動き】でひとことは完成します。
【膝】+【まっすぐ】これだけで意味は伝わりますね。
ここまで来るとイメージできる動きも分かりますね。
「まっすぐ」「グラグラ」「90°」など
意味を伝える言葉は多々あります。その言葉を聞いただけで
頭にイメージが浮かぶもの。
これで誰でも使いやすいカンタンな仕組みにすることができます。
<覚えやすい>
先ほどの【使いやすい】を達成できていれば、ここもカンタンです。
ただ1つポイントとしては、【ステップにする】ことです。
書き方は
- アゴは下がってるか
- 肩は浮いているか
- 肘は伸びているか
こんな感じのステップ調で書いておくと見やすいし確認もしやすいですよね。
【使いやすい】は【覚えやすい】にもつながります。
<伝えやすい>
すぐに使えるポイントの最後は伝えやすいこと。
前の2つのポイントが出来ていれば、もう伝えやすくなっています。
ここでダメ押しポイントです。
それは図や写真を使うこと。そんな事か、と思うでしょう。
問題はどんな図や写真を使うか。
答えはステップ調に合わせた場面の図・写真を用意しましょう。
・肩の浮いている写真
・膝がまっすぐの写真
載せてはいけないのは【全体像】です。
全体像の写真では情報が多すぎます。
カンタンなステップ調の言葉で、ポイントをだけの図を使う。
これですぐに使える仕組みの完成です。
3.病棟のニーズに沿う
ここが最重要です。
大事なことは2つ。
- 経過を知る
- 現状を知る
仕組み作りは前の2つのポイントを満たせば大丈夫です。
しかし、仕組みが完璧でも上の2つのポイントを押さえなければなりません。
病棟が
・何に困っていて
・どうしたいのか
このニーズを満たすことですぐ実用できる仕組みになります。
<経過を知る>
何かを始めてもらうには、それまでの経過を知っておくことが重要です。
・これまでの取り組み
・試行錯誤してきた過程
など何度も話を重ねてきた結果が病棟のシステムになっています。
新しい仕組みはここを否定するものであってはなりません。
以前のシステムにも入り込めるような【隙間システム】である必要があります。
そのためポジショニングのやり方を伝えるのではなく、
ポジショニング後のチェック項目を伝える。
こうすれば否定もせずに、そのままのシステムに入り込めますよね。
<現状を知る>
新しい仕組みを取り入れてもらうには、今の仕組みよりも便利である必要があります。
そのために現状の仕組みの
・利便性
・問題点
・改善点
これらを知り、現状の仕組みと新たな仕組みを比較をしましょう。
伝える順番も同様に、今の仕組みの便利な点、そこに対しての問題点を出し
最後に改善が必要な点を伝えてください。
これまでの病棟の取り組みを知って、現状の仕組みを知ることで
新たなニーズが見えてきます。
そのニーズに対しての提案をするだけで驚くほどスッと動き出します。
病棟が動かなくて、患者さんへ不利益が出ないように
この方法でトライしてみてください。
今日はここまでです。読んでいただきありがとうございました。
また次回の記事でお会いしましょう。
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